水槽

アカヒレの飼い方〜小型水槽での育て方

アカヒレの飼い方について

アカヒレの飼育は決して難しくありません。ここでは初心者の方にも安心してアカヒレの素晴らしさを楽しんでいただけるよう、最小限の器具で上手に飼育するための水槽のセット手順や日常の管理をやさしく解説してまいります。

アカヒレゴールデンアカヒレ

アカヒレの飼い方〜基礎知識〜

観賞魚にとって快適な環境にしてあげるには、飼育する種類について知っておくことが大切です。そこで、ここではアカヒレがどのような観賞魚なのかをひもといてみたいと思います。

生息地

アカヒレの故郷は、中国広東省にある白雲山と香港の一部、そして、ベトナムです。英名ではホワイトクラウドマンテンフィッシュと呼ばれるように白雲山のアカヒレが有名ですが、現在、観賞魚として流通しているのは耐寒性が強いグループの子孫のようで、その詳細な産地は不明です。

すでに白雲山産と香港産のどちらも生息地が開発で失われているため、この地域の原種アカヒレは絶滅、もしくは、極めて絶滅に近い状態にあるそうですが、近年、新たに中国南東部沖の島でも発見されたとのことです。

野生のアカヒレはいずれも水温18度以上の川に生息する熱帯魚ですが、一部のグループは低水温にも耐えうる性質を持っているらしく、観賞魚として流通しているアカヒレは日本の冬でも室内などで10度以上あれば無加温で飼育することができます。

また、ベトナム産のアカヒレはこれらとは別種で、ベトナムアカヒレとして流通しています。ベトナムアカヒレは寒さに弱いため、熱帯魚として飼育する必要があります。

環境

観賞魚として今も流通しているアカヒレは、数十年も前に採取されて養殖され続けてきたグループで、大きく立派に育ち、耐寒性も高く、いわば飼いやすく改良された強健な品種と言えます。水質についても弱酸性から弱アルカリ性まで幅広く適応し、日本の水なら硬度も気にする必要はありません。

これらのことからも、あらゆる環境に適応できうるアカヒレは、ある程度の泳げるスペースさえあれば金魚やメダカと変わりなく飼育することのできる観賞魚と言えましょう。

種類

観賞魚として流通している種類には、アカヒレとゴールデンアカヒレ、ロングフィンアカヒレ、ベトナムアカヒレがいます。このうち最も強健で飼いやすく、始めて観賞魚を飼育される方におすすめなのは、アカヒレとゴールデンアカヒレです。

アカヒレアカヒレ
アカヒレ

趣のあるアカヒレの繊細な色彩は、うろこの一枚からヒレの先まで実に見ごたえがあり、見ていて飽きません。もとの産地は不明ですが、白雲山産か香港産のいずれか、またはその交配種と思われます。いずれにしてもこの地域に生息していた野生のアカヒレは、すでに絶滅しているようです。

ゴールデンアカヒレゴールデンアカヒレ
ゴールデンアカヒレ

ゴールデンアカヒレはアカヒレの突然変異により誕生した改良品種で、光の加減によって目の周りがうっすらと淡いブルーに輝き、とてもきれいです。自然界では何千匹に一匹でしか生まれない黄変種で、しかも保護色を持たないこうした突然変異は、野生では、ほとんど生き延びることができません。その神秘的な美しさも、まさに奇跡のようです。

ロングフィンアカヒレはアカヒレのヒレを長く改良した品種ですが、今はアカヒレとの交配がすすみ、かつてのようなロングフィンアカヒレは見られなくなりました。また、ロングフィンアカヒレにはヒレをふちどるワンポイントがありません。

ベトナムアカヒレは下のヒレが赤く染まる種類で、頭から尾にかけてハッキリとした黒い線が入ります。最近になって発見された種類です。

繁殖

アカヒレの繁殖はとても古くから日本でも行われていて、水草の大量にある水槽では自然繁殖することもあります。卵は適当にばらまかれますが、アカヒレは卵を見つけると見境なく食べてしまうので、殖やそうと思えば卵が見つかりにくいように工夫する必要があります。

例えば自然繁殖なら大量のウィローモスをアカヒレが入り込めないくらいの密度に固めて底一面に沈めておき、その上にほぐしたウィローモスを広げ、更にアマゾンフロッグビットのように根が長く伸びる浮き草を入れます。また、人工繁殖なら園芸用のネットを底一面に沈めて流木などで押さえておくのも良いでしょう。

いずれも産卵用の水槽には大きくて強いオスと、お腹の大きなメスを入れます。人工繁殖の場合は、ネットの底に卵を見つけた時点で親を取り出します。幼魚ではオスとメスの区別がつきにくいので、何匹かまとめて飼育しておくと良いでしょう。

アカヒレのオスアカヒレのメス
左:アカヒレのオス / 右:アカヒレのメス

アカヒレは稚魚がとても小さく、最初のエサやりが少し難しいため、最初は初期飼料となる微生物が発生しやすい自然繁殖がおすすめです。

アカヒレの病気と予防

アカヒレは正しい管理のもとでは丈夫ですが、病気になってしまうと重症化しやすい傾向にあります。そのため、まずは何よりも予防が大切です。ここではどんなときにアカヒレが病気になりやすいかをみてみましょう。

水の汚れ

アカヒレを飼育していると、水槽の中にはアンモニアが発生します。これは濾過バクテリアの働きによって、亜硝酸塩、そして硝酸塩へと処理されます。硝酸塩はアンモニアや亜硝酸塩に比べて、毒性の弱い物質です。ところが、この硝酸塩が蓄積してくると、アカヒレの免疫機能が低下し、普段はかからないような病気にかかりやすくなります。こうした場合に特に発生しやすいのが、細菌性皮膚炎です。

細菌性皮膚炎はエロモナス菌の感染によって起こり、症状によって、穴あき病(体の一部が充血して穴が開いてくる)、赤飯病(体に充血した点があちこちに現れる)、松かさ病(ウロコが逆立ち、体が膨らんだように見える)、などと呼ばれることもあります。ヒレにもしばしば感染し、尾ぐされ病と紛らわしいですが、こちらは赤く充血します。治療には専用の魚病薬を用います。たいへん進行が早く、すぐ手遅れになってしまいますので、気付いたら即座に治療してあげる必要があります。

エロモナス菌はどこにでもいる細菌で、たとえ水槽にこの細菌がいたとしても元気なアカヒレには感染しません。長い間、ビンのような小さな容器で飼育していたり、エサを与え過ぎてしまったり、濾過器に頼って水換えをしなかったり、と言った場合に発生しやすい病気です。

また、コショウ病なども同様です。こちらは極めて細かい点のようなものが発生しますが、初期のうちは発見が困難で、気付いた時にはすでにその名の通り、コショウを振りかけたようになってしまっていたりします。治療にはマラカイトグリーンを成分とする魚病薬の他、塩水浴も効果があります。

水温の変化

変温動物であるアカヒレは水温がそのまま体温になります。そのため、水換えなどで冷たい水を入れるなどして急に水温が変わると、これもまた大きな負担になります。特に水温が急激に下がったときには白点病にかかりやすくなります。体やヒレによく目立つ白い点がつきますので、すぐにわかります。

白点病の治療には専用の薬品を使用しますが、初期のうちならすぐに治ることでしょう。

アカヒレにはこちらの水槽もおすすめです。

保温器具のいらないアカヒレは薄型水槽にぴったり。メダカ鉢に入れれば中国山水の雰囲気になります。野性味あるイメージでの飼育がお好みの方には溶岩石つきの天然石タイプ、そして陶器水槽にもたいへん良く合います。