ベタの飼育は決して難しくありません。ここでは初心者の方にも安心してベタの素晴らしさを楽しんでいただけるよう、最小限の器具で上手に飼育するための水槽のセット手順や日常の管理をやさしく解説してまいります。
ベタの飼い方〜基礎知識〜
熱帯魚にとって快適な環境にしてあげるには、飼育する種類について知っておくことが大切です。そこで、ここではベタがどのような熱帯魚なのかをひもといてみたいと思います。
生息地
ベタの故郷はタイです。水は多くの腐植酸を含む弱酸性の軟水です。流れのない池や沼を好みますが、このような環境は酸素不足になりやすいため、ベタはこうした環境でも生きられるようにエラが特殊な構造に進化しました。このラビリンス器官と呼ばれる特殊なエラは、水上の空気を吸い込んで呼吸することができるもので、このため、ベタは酸素不足にとても強い性質を持っています。
環境
ベタは流れのない環境に適応して進化していますので、水の流れを好みません。また、池や沼のように水の入れ替えが少ない環境に生息しているため、水質の変化も苦手です。そして、もちろん汚れた水(アンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩の含まれた水)も苦手です。これらを考えますと、「1.流れがなく」「2.水を汚さずにできるだけ水換えをしなくても清潔で安全な水を維持できる環境を作る」ことが、ベタにとっては暮らしやすい環境となります。
種類
原種のベタには多くの種類がいて、大きく二つのグループに分けられます。ひとつは泡で巣をつくり繁殖するグループ、もうひとつは口の中で子を育てるグループです。一般的に「ベタ」として見かけるのはこのうち、泡で巣をつくるグループのメンバーである「ベタ・スプレンデンス」という種類です。これ以外の種類は一般的にワイルドベタと呼ばれ、流通上は「ベタ」とは区別されて販売されています。ワイルドベタの多くは飼育にコツを必要とする経験者向けの種類です。
青いベタ(トラディショナルベタ)
原種のベタ・スプレンデンスはヒレがとても短いのですが、長年の品種改良によって、今ではとても優雅な姿になっています。ベタ・スプレンデンスの改良品種でもっとも普及しているのは「トラディショナルベタ(通称トラベタ)」と呼ばれる種類で、とてもバランスの良いスタイルをした、美しい品種です。色彩もシンプルですが、それだけに誰が見ても美しいと思える姿をしています。
ハーフムーン(ショーベタ)
ベタ・スプレンデンスの改良品種のうち、主に品評会などで盛り上がりをみせているのが「ショーベタ」です。ショーベタは芸術的なまでの美しさが特徴です。特に尾が半月のように大きく開くのが良いとされ、尾の開き具合によってデルタテール、スーパーデルタ、そして、ハーフムーンというようにクラス分けされます。色彩も模様も様々ですが、それだけに好みも分かれやすい種類でもあります。
フレアリング
ベタはオス同士と激しく争う性質がありますので、ベタの姿を見せますと、ヒレを大きく広げて威嚇します。これをフレアリングと言います。ショーベタのブリーダーの中には、よりヒレが大きくなるようにと定期的にフレアリングをさせて育てる方も少なくありません。
フレアリングの方法には二つあります。ひとつはベタの飼育容器を二つならべて、お互いの姿が見えるようにしてあげる方法、もうひとつは鏡で自分の姿を見せてあげる方法です。
ビンなどの水が汚れやすい環境で長くベタを飼育していると、自慢の大きなヒレが癒着(ゆちゃく……ヒレが広げられなくなってしまう状態)になってしまうことがあります。フレアリングはこれを防ぐためにも有効と言われています。
繁殖
トラディショナルベタやショーベタは泡巣を作って繁殖するバブルネストビルダーと呼ばれるグループのベタたちです。オスは成長すると自然に泡で巣を作るようになります。泡巣は浮き草を入れておくと、より強固に作られるでしょう。
繁殖は容易で、オスが水面に泡で巣を作りましたら、十分に栄養をとっている、ふくよかなメスを入れてあげますと、たいていすぐに産卵します。
ベタの繁殖はとても激しく、まるでオスがメスをいじめているように見えるかもしれません。たいていの場合、メスのヒレがぼろぼろになってしまうくらいです。ですが、これがベタの繁殖なのです。ただし、やはり相性が悪い場合もありますので、メスを入れた後は、オスとメスの相性が本当に悪いかどうかなど、経過を注意深く観察することが大切です。
そして、もし三日たっても産卵しなかったり、メスがあまりにひどく傷つけられてしまうようでしたら、いったんメスを取り出して休ませてあげます。この場合には、できれば他のメスを入れてあげた方が良いかもしれません。
泡巣に生み付けられた卵は、次々と下に沈んでいきます。オスは一生懸命にそれを口で拾い集め、泡巣に戻します。これをずっと続けます。卵はだいたい二日ほどで孵化してきますが、仔魚も泳ぐことはできず、やっぱり下に落ちてしまいますので、オスはまたこれを口で拾い集め、泡巣に戻します。
ベタの子が自由に泳ぐことにできる稚魚になれば、水槽の中にいる小さな微生物などを食べ始めますが、これだけではとても足りませんので、ブラインシュリンプの卵を塩水で孵化させて、一日に朝と夕の二回ほど、これを真水で薄めて与えます。稚魚はぐんぐん大きくなっていくでしょう。
オスはその後も数週間は稚魚を守るような行動を見せますが、稚魚が自由にエサを取れるようになりましたら、適当なところで取り出して、オスを休ませてあげましょう。
ベタの子はオスとメスがわかりはじめるようになった頃から、オスは一匹ずつ分けて飼育しなくてはなりません。つまり、一年中、20度以上を保てる場所で、小さな容器を数十個ほど置く必要があるのです。あとになって困らないためにも、こうした環境を整えてあげられるかどうかを良く確認してからベタの繁殖にチャレンジされるのが安心です。
ベタの病気と予防
ベタは正しい管理のもとでは丈夫ですが、病気になってしまうと重症化しやすい傾向にあります。そのため、まずは何よりも予防が大切です。ここではどんなときにベタが病気になりやすいかをみてみましょう。
水質の変化
新しくベタを購入した場合や、水槽の掃除や水換えなどで、水質が大きく変わった場合に、尾ぐされ病などが発生しやすくなります。尾ぐされ病はカラムナリスという菌が感染して発症し、口やヒレが白くバサバサになってなくなっていきます。専用の魚病薬で治療します。
水槽の水は次第に水道水とは違った水質になっていきます。ここにたくさんの水道水を入れてしまうと、ベタにはかなりの負担がかかります。このため、一度にたくさんの水を換えるのは良くありません。ベタの場合は4分の1くらいずつを心がけ、新しい水槽に移し替えるときも、少しずつ水を加えながら慣らし、数時間かけて水合わせをしてあげると安心です。
スレ
水換えのときなどはベタをアミですくって別の容器に移し替えてあげますが、このときに目の粗い網を用いると、ベタの体に細かい傷がつくことがあります。ベタの体表はデリケートで、他の熱帯魚では大丈夫でもベタには重大な事態につながってしまうこともあります。こうした細かい傷をスレと言いますが、これは様々な病気の原因になります。アミはできるだけ熱帯魚にやさしいソフトなものを選びましょう。
水の汚れ
ベタを飼育していると、水槽の中にはアンモニアが発生します。これは濾過バクテリアの働きによって、亜硝酸塩、そして硝酸塩へと処理されます。硝酸塩はアンモニアや亜硝酸塩に比べて、毒性の弱い物質です。ところが、この硝酸塩が蓄積してくると、ベタの免疫機能が低下し、普段はかからないような病気にかかりやすくなります。こうした場合に特に発生しやすいのが、細菌性皮膚炎です。
細菌性皮膚炎はエロモナス菌の感染によって起こり、症状によって、穴あき病(体の一部が充血して穴が開いてくる)、赤飯病(体に充血した点があちこちに現れる)、松かさ病(ウロコが逆立ち、体が膨らんだように見える)、などと呼ばれることもあります。ヒレにもしばしば感染し、尾ぐされ病と紛らわしいですが、こちらは赤く充血します。治療には専用の魚病薬を用います。たいへん進行が早く、すぐ手遅れになってしまいますので、気付いたら即座に治療してあげる必要があります。
エロモナス菌はどこにでもいる細菌で、たとえ水槽にこの細菌がいたとしても元気なベタには感染しません。長い間、ビンのような小さな容器で飼育していたり、エサを与え過ぎてしまったり、濾過器に頼って水換えをしなかったり、と言った場合に発生しやすい病気です。
また、コショウ病なども同様です。こちらは極めて細かい点のようなものが発生しますが、初期のうちは発見が困難で、気付いた時にはすでにその名の通り、コショウを振りかけたようになってしまっていたりします。治療にはマラカイトグリーンを成分とする魚病薬の他、塩水浴も効果があります。
水温の変化
変温動物であるベタは水温がそのまま体温になります。そのため、水換えなどで冷たい水を入れるなどして急に水温が変わると、これもまた大きな負担になります。特に水温が急激に下がったときには白点病にかかりやすくなります。体やヒレによく目立つ白い点がつきますので、すぐにわかります。
白点病の治療には専用の薬品を使用しますが、初期のうちならすぐに治ることでしょう。
ベタにはこちらの水槽もおすすめです。
ベタはその大きなヒレがあるために水の流れを苦手とします。また、オス同士は激しくけんかをしてしまうため、オスは一匹でしか飼うことが出来ません。そのため、大きな水槽ではかなり一人ぼっちな感じになってしまいます。
こちらの水槽は女性でも扱いやすい手頃なサイズなので、ベタが一匹でも広すぎず、存在感もばっちりです。もちろんベタが自由に泳ぎまわれるスペースがあります。
この水槽はフィルターを使わない浄化システムを採用しているため、ベタが苦手とする水の流れがありません。また、水が汚れにくく、水換えが少なくて済みます。そのため、水質の変化を嫌うベタにとても優しく飼育することができます。
洗わずに使える良質の流木により、少しずつ水質をベタの好む弱酸性の軟水にします。更に流木はベタの生息水に豊富な腐植酸を補います。また、新しい水でなくても枯れにくい丈夫な水草がついているため、水換えのペースをベタに合わせて行うことができます。
青いベタを飼育されるには、レガーロは特におすすめです。レガーロならではの特別な照明は、宝石のディスプレイに使われるハロゲンランプの照明よりも更にスポット性が高い10W。青いベタをゴージャスに輝かせます。